日本社会 2007 11 18

 最近、よく聞かれるのが、
「日本社会は変わってしまったのか」ということです。
 かつては、日本人全員が中流階級と言われたのに、
今では、1年で数億円稼ぐ人がいる一方で、
住まいがなく、24時間営業の店で寝泊りをしている人がいると言われています。
 しかし、そういう経済現象は、ビジネス社会だけではないのです。
王貞治選手といえば、ホームラン王として世界的に有名でしょう。
私の記憶が正しければ、
王貞治選手の年棒は、最高で7000万円程度だったと思います。
今の野球選手の年棒は、最高で、いくらでしょうか。
数億円でしょう。
 王選手の時代は、たとえ7000万円でも、
一般大衆からは、「高すぎる」という声もあったほどです。
 今のプロ野球界には、王選手に匹敵するほど、
スター選手で、なおかつ才能がある選手はいないでしょう。
それでも、今、年棒は数億円となっています。
 それは、なぜか。
王選手の時代は、鎖国の時代でした。
大リーグに移籍するどころか、
他のチームに移籍するのさえ困難がある時代でした。
 今は、プロ野球選手は、才能があれば、
王選手の時代に比べれば、自由に他球団に移籍し、
大リーグにも移籍できるでしょう。
 プロ野球選手に国境はなくなった。
才能があれば、外国でも活躍できる。
 実は、これは、プロ野球界だけでなく、
ビジネス社会でも、同じことが起きているのです。
 昔は、東京市場で、あるいは大阪市場で、商売をするという感じだったでしょうが、
今や、経済的には、地球が、ひとつの市場となりつつあります。
昔のように、鎖国をやっている場合ではないのです。
 鎖国というと、「江戸時代の話か」と思うでしょうが、
実は、最近まで、日本は、鎖国をしていたのです。
 金融システムは、護送船団行政と言われており、
これは、外国から見れば、まるで金融鎖国にも見えたでしょう。
産業界だって同じです。
星の数ほど、規制があって、新しいビジネスは生まれにくかったと言えるでしょう。
 ここまで読むと、
「ああ、経済鎖国、金融鎖国、資本鎖国、労働鎖国の方がよかった」。
そう思う人が多いかもしれません。
確かに、そういう国のあり方も間違いではありません。
 しかし、地球そのものが、ひとつの市場となりつつある現代において、
鎖国政策をやったら、日本は、アジアの片隅にあるローカルな国になってしまいます。
 そういう生き方も間違いではありませんが、
日本は、経済大国の看板を下ろすことになり、
おそらく、みんなが等しく貧乏になっていくことになるでしょう。
 それでも、「昔の日本の方がいい」。
甘やかされ、過保護に育った、今の若者は、そう思うかもしれません。
 しかし、これは、チャンスだと思うべきです。
昔は、資本がないと、事業を起こすことは難しかったのです。
今は、資本がなくても、資本家でなくても、成功する可能性があるのです。
(下記の「知識資本主義」を参照)
 若者よ、失敗を恐れるな。
いくらでも挑戦し、いくらでも失敗できることが、若者の特権です。
 しかし、一方で、世界のどこかで、
「素朴な社会に戻れ。エデンの園へ戻れ。自然に帰れ」という運動も起きてくるでしょう。
人間は成功を求める存在であると同時に、精神的な癒しを求める存在でもあるからです。

書名 知識資本主義(ビジネス、就労、学習の意味が根本から変わる)
著者 アラン・バートン=ジョーンズ
出版社 日本経済新聞社(2001年4月2日出版)
KNOWLEDGE CAPITALISM by Alan Burton-Jones

 「知識資本主義」という本は、
最近、ダイヤモンド社から、レスター・C・サロー氏の本が出版されていますが、
私は、アラン・バートン=ジョーンズ氏の本の方が、強い印象が残りました。
 この本の紹介文が、その内容を的確に表現していますので、引用します。
「貨幣や土地、労働に代わる最も重要な資本として、『知識』が急浮上している。」
「本書は、労働の供給よりも、知識の供給が重視されるようになることや、
社内外の知識を最大限に生かし統合させるうえで、
企業の所有や経営が変わらざるを得ないこと、
知識を手段とする個人にとって『学習』の意味が変わること、
新しい資本家の登場について説く。」
 今までの「古い資本主義」は、
貨幣や土地、労働が、資本となってきました。
 しかし、これからの資本主義は、
つまり、「新しい資本主義」は、知識が資本となるでしょう。
 これは、後に、産業革命ではなく、
「価値革命」と呼ばれることになるでしょう。
資本主義の持つ価値に、革命が起きるでしょう。
















































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